研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科の植田美那子助教が第23回日本植物形態学会大会で「奨励賞」を受賞
植物成長制御研究室の植田美那子助教が第23回日本植物形態学会大会で奨励賞を受賞しました。本賞は応募者の中から選考委員会が選定し、植物形態学の分野で将来の活躍が期待される若手研究者に授与されるものです。
受賞のコメント
この度は、このような名誉ある賞を受賞出来て光栄に思います。これまで私は植物の形作りのしくみを探るべく、受精から胚発生に至る過程で体軸が生み出される機構について研究してきました。昨年度に当研究科に着任してからもこの研究を続けており、細胞分裂の詳細な解析に長けた当研究室で新たな研究を展開することを期待されての受賞だと受け止めております。今後とも研究に邁進することを誓うとともに、これまで研究を支えて下さいました方々に深く感謝致します。
受賞時の発表内容
ほとんどの植物において、主要な体軸である頂端-基部軸は、受精卵の不等分裂によって形成される。しかし、受精卵が極性化するしくみや、それが胚のパターン形成に繋がるしくみはほとんどわかっていなかった。我々は、モデル植物であるシロイヌナズナにおいて、受精卵と、その不等分裂後の基部細胞で発現するWOX8遺伝子に着目し、その発現の非対称性を生み出す機構を探ることで、体軸形成のしくみに迫ろうと考えた。解析の結果、WOX8遺伝子プロモーターに直接結合するWRKY2転写因子を同定し、WRKY2がWOX8の非対称発現のみならず、胚のパターン形成にも必須であることを見出した。さらに、卵細胞の極性が受精直後に一時的に崩壊し、受精卵の成熟に伴って再極性化されることも突き止め、WRKY2は卵細胞の極性化や受精直後の極性崩壊には不要であるものの、受精卵でWOX8の転写を誘導することで、細胞の再極性化を担うことも見出した。このことから、受精後からの転写開始が植物の体軸形成に重要な役割を果たすことが明らかとなり、一般的に初期胚以降でしか転写が始まらない動物との発生戦略の違いが浮き彫りとなった。
関連論文
Ueda M, Zhang Z, Laux T. (2011) Transcriptional activation of Arabidopsis axis patterning genes WOX8/9 links zygote polarity to embryo development. Dev Cell. 15, 264-70.
(2011年10月05日掲載)