研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の大古殿美加さん(博士後期課程3年)が「新学術領域(新生鎖の生物学)」においてポスター優秀賞を受賞しました.
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の大古殿美加さん(博士後期課程3年)が「新学術領域(新生鎖の生物学)」においてポスター優秀賞を受賞しました.
受賞コメント
「平成29年度 第1回 新生鎖の生物学 班会議」において「ポスター優秀賞」を受賞することができ大変嬉しく思います. この賞を頂けたのは, 指導教員の木俣准教授や高木教授のみならず, 日頃から研究を支えていただいている研究推進機構河野特任教授をはじめ, OBを含めた河野研究室のみなさまのお蔭です. 心より感謝申し上げます. この受賞を励みに, 今後さらに研究を発展させて, 社会に貢献できるよう精進してまいりたいと思います.
受賞内容
タイトル「XBP1u の翻訳休止におけるリボソームタンパク質の関与」
mRNA の翻訳はタンパク質製造装置であるリボソームが mRNA 上をスムーズに進行することで行われる. しかし, 近年の研究により翻訳が一時的に停止する「翻訳休止」という現象が見出された. 当研究室においては, 哺乳動物細胞の転写因子 XBP1u の C 末端で翻訳休止が起こることが発見され, この翻訳休止が小胞体ストレス応答に関与する活性転写因子 XBP1s の効率的な合成に寄与する「機能性翻訳休止」であることが明らかになっている. しかし, そのメカニズムについては詳細な研究が行われていない. そこで, 当研究では, XBP1u 新生鎖とリボソームトンネルの構成因子であるリボソームタンパク質との相互作用に着目し, タンパク質レベル, 及び細胞レベルでの実験を行った.
哺乳動物細胞における光架橋実験により, XBP1u の翻訳休止が起こっている際, RPL3, RPL4, RPL7といった複数のリボソームタンパク質が XBP1u 新生鎖に近接することが分かった. また, これらのリボソームタンパク質をノックダウンした細胞では, XBP1uの翻訳休止産物が減少する一方で全長タンパク質が増加することが Peptidyl-tRNA を検出するタンパク質レベルの実験と FACS を用いた細胞レベルの実験により示され, XBP1u の翻訳休止には RPL3, RPL4, 及び RPL7が関与することが示唆された. さらに, これらのリボソームタンパク質のノックダウン条件下において, 活性転写因子 XBP1s の合成効率が低下することが示され, XBP1u の翻訳休止が持つ機能性発揮にも XBP1u 新生鎖とリボソームタンパク質との相互作用が関与することが示唆された.
関連した資料
1. Yanagitani K.,Kimata Y.,Kadokura H. and Kohno K. (2011) Translational pausing ensures membrane targeting and cytoplasmic splicing of XBP1u mRNA. Science. 4; 331 (6017), 586-9.
新学術領域「新生鎖の生物学」
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/nascentbiology/
【ストレス微生物科学研究室】
研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/
(2017年11月16日掲載)