NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の 吉川 雄樹 さん(博士後期課程3年)が「第14回酵母国際会議(ICY14)」において「Carl Singer Foundation award」を受賞

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の吉川雄樹さん(博士後期課程3年)が「第14回酵母国際会議(ICY14)」において「Carl Singer Foundation award」を受賞しました。この賞は、若手研究者のサイエンティフィックなコミュニケーション技術の向上を目的として設けられたものです。

受賞コメント

この度、「14th International Congress on Yeasts」において「Carl Singer Foundation award」を受賞することができ、大変嬉しく思います。この賞を受賞できたのは、ご指導して頂いている高木博史教授、渡辺大輔助教、那須野亮助教をはじめ、研究室の皆様のおかげです。また英語での口頭発表であったため、これまでに英語のご指導を頂いた先生方にも心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みに、より一層研究に邁進していきたいと思います。


受賞した発表の内容

「Regulatory mechanism of the flavoprotein Tah18-dependent nitric oxide synthesis and cell death in yeast」
一酸化窒素(NO)はシグナル分子として様々な生命現象に関与し、哺乳類ではArgからNO合成酵素(NOS)により生成する。一方、酵母では哺乳類NOSのオルソログが存在せず、NOに関する研究は進んでいなかった。当研究室では以前に、高温ストレス条件においてフラボタンパク質Tah18依存的に酵母細胞内でNOが合成され、高温ストレス耐性に寄与することを見出した。Tah18はNADPHの電子をDre2タンパク質へと渡すことで細胞質の鉄硫黄タンパク質合成に関わるジフラビン還元酵素として知られている。
   今回の報告では、過酸化水素処理条件においても酵母がTah18依存的なNO合成を示すこと、またDre2タンパク質がNO合成を抑制することを見出した。さらに、過酸化水素処理に応答してTah18-Dre2複合体が解離したことに加え、Tah18とDre2が融合したタンパク質を人為的に発現させた株においてNO合成量が低下したことから、Tah18-Dre2複合体間の相互作用がNO合成の抑制に重要であることを見出した。以上の研究から、Dre2がTah18から伝達される電子の優先的なアクセプターとなることでTah18依存的なNO合成を抑制しており、酸化ストレスに応答したTah18-Dre2複合体の解離によってTah18が異なる相互作用パートナーへと電子伝達することがNO合成に寄与する、というモデルを提唱することができた。 

関連する資料 

1)Nishimura A, Kawahara N, Takagi H (2013) The flavoprotein Tah18-dependent NO synthesis confers high-temperature stress tolerance on yeast cells. Biochem. Biophys. Res. Commun., 430:137-143.
2)Yoshikawa Y, Nasuno R, Kawahara N, Nishimura A, Watanabe D, Takagi H (2016) Regulatory mechanism of the flavoprotein Tah18-dependent nitric oxide synthesis and cell death in yeast. Nitric Oxide, 57: 85-91. 

【第14回酵母国際会議 /14th International Congress on Yeasts】

http://icy2016.com/index.html

【ストレス微生物科学研究室】

研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/

(2016年10月12日掲載)

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