研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の 伊藤 稔 さん(博士前期課程2年)、高木 博史 教授 が「第14回酵母国際会議(ICY14)」においてベストポスター賞を受賞
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の 伊藤 稔 さん(博士前期課程2年)、高木 博史 教授 が「第14回酵母国際会議(ICY14)」においてベストポスター賞を受賞しました。
受賞のコメント(伊藤)
この度は、「第14回酵母国際学会」において「ベストポスター賞」を最多得票での受賞及び、高木博史教授と共に受賞することができたことを大変光栄に思います。この賞を頂くことができたのも、高木博史教授、渡辺大輔助教をはじめとした先生方からのご指導・ご助言のお陰であると考えています。特に、渡辺助教には大変お忙しいところポスター制作においても熱心なご指導をして下さったことに深く感謝しております。また、当研究に携わって下さった共同研究者の皆様にもこの場を借りて深く御礼申し上げます。この受賞を励みに、今後さらに、研究の発展を目指して精進していきたいと考えています。
受賞した発表の内容 (伊藤)
『Physiological role of lactic acid bacteria in
traditional sake brewed with sake yeast Saccharomyces
cerevisiae』
伝統的な清酒醸造法である『生酛造り』では、Leuconostoc
mesenteroidesやLactobacillus
sakeiといった乳酸菌が乳酸を作る環境下で、酵母の増殖が始まります。乳酸の生産は、酵母以外の微生物の侵入を防ぐのに重要であると考えられており、近代の清酒醸造では乳酸菌を用いずに乳酸を添加する方法が広く使われています。一方、Jaroszらにより (Cell, 2014)、様々なバクテリアが酵母のグルコース抑制の解除を引き起こすタンパク質性因子[GAR+]の誘導を促進することが報告されました。この発見を元に、私たちは本研究において、生酛造りで用いられる乳酸菌も、清酒酵母において[GAR+]を誘導し、代謝に何らかの影響を及ぼすのではないか、という仮説の実証を目指しました。
その結果、まず、清酒酵母においても[GAR+]を誘導可能であり、生酛乳酸菌が清酒酵母の[GAR+]誘導を促進していることを実証しました。清酒酵母の中でも特に、生酛で用いられている酵母と乳酸菌を組み合わせたときに顕著な[GAR+]誘導を示したことから、生酛造りでも[GAR+]の誘導が実際に起こっていることが示唆されました。さらに、清酒酵母にあらかじめ[GAR+]を人為的に誘導させた株を用いて清酒を醸造したところ、元の株を用いた場合と比べて香味成分に差が生じることが示されました。以上の結果から、生酛造りにおける乳酸菌は、乳酸など酵母が生産しにくい特徴的な成分を付与することに加え、酵母の炭素代謝の変化を引き起こすことにより清酒の品質に寄与するという新たな可能性を見出しました。
受賞した発表の内容 (高木)
『Isolation and characterization of awamori yeast mutants with l-leucine accumulation that overproduce isoamyl alcohol』
【第14回酵母国際会議 /14th International Congress on Yeasts】
【ストレス微生物科学研究室】
研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/
(2016年10月12日掲載)