研究成果の紹介
自在に花を咲かせる夢のホルモン(フロリゲン)を発見
植物の開花は環境に応答して起きるが特に日長によって制御されている。日長は葉で認識されるが、実際花芽を形成する場所は茎の先端部にある分裂組織である。そこで、葉で作られ茎頂に運ばれ花を咲かせるホルモン(フロリゲン)の存在が70年近く前にロシアの科学者によって提唱されてい たがその実体はこれまで謎であった。
イネの花成を促進する遺伝子として知られているHd3a遺伝子に、GFPを結合させたうえ、茎や葉の内部で栄養分が移動する通り道である維管束で働くような性質を持たせた合成遺伝子を作り、イネに導入した。その結果、この遺伝子を導入したイネは開花時期を短縮できた。さらに、緑の蛍光を発するタンパク質(Hd3a:GFP融合タンパク質)が葉および茎の維管束で観察されたのみならず、花を形成する茎の先端(茎頂と呼ぶ)においても観察された。Hd3a:GFP融合タンパク質はもともと葉のみで作られ、葉や茎の維管束、さらには茎の先端ではほとんど存在しないことから、Hd3aタンパク質が葉で日長の変化などの環境要因によって作られ、そのタンパク質が茎の先端に運ばれ花を咲かせることが明らかになった。
茎の先端(花の形成される場所)で観察されたHd3a:GFPタンパク質
フロリゲンであるHd3aタンパク質は葉の維管束で作られ茎の維管束を通って先端にある茎頂分裂組織へと運ばれ、そこで花を形成する
掲載論文
Tamaki, S., Matsuo, S., Wong, H. L., Yokoi, S. and Shimamoto, K. (2007) Hd3a protein is a mobile flowering signal in rice. Science 316, 1033-1036.
(2007年05月28日掲載)