研究成果の紹介
耐病性誘導の中枢を担う植物免疫複合体の発見
植物は病原体の侵入を受容体を介して認識し、様々な防御反応を誘導します。これまで、我々はイネの低分子量Gタンパク質であるOsRac1が様々な防御反応の誘導を制御する分子スイッチとして機能していることを明らかにしてきました。今回、OsRac1が形成する複合体について解析を行ったところ、他の植物で受容体の安定化に関与することが知られていたRAR1やHSP90がOsRac1と複合体を形成していることを発見しました。また、HSP90の機能を阻害すると、複合体の形成が阻害され、OsRac1による抵抗性反応の誘導も阻害されました。また、イネにおけるRAR1の機能を調べるために、発現抑制イネを作成したところ、RAR1発現抑制イネはイネの重要病害であるイネの「いもち病」や「白葉枯病」に対して非常に弱くなり、RAR1も耐病性誘導において重要な因子であることがわかりました。このように、OsRac1を含む複合体(Defensome)は、植物の抵抗性誘導において極めて重要な役割を果たしていると考えられます。
図1 OsRac1複合体を介した防御反応の誘導
掲載論文
Thao, N. P., Chen, L., Nakashima, A., Hara, S. I., Umemura, K., Takahashi, A., Shirasu, K., Kawasaki, T., Shimamoto, K. (2007) RAR1 and HSP90 Form a Complex with Rac/Rop GTPase and Function in Innate-Immune Responses in Rice. Plant Cell
(2007年12月27日掲載)