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第10回梅園賞授賞式が開催されました。
東北大学大学院 生命科学研究科 齋藤大介博士(平成17年度から平成24年度までバイオサイエンス研究科分子発生生物学研究室助教として在籍)が第10回梅園賞を受賞しました。授賞式と記念講演が10月9日に本研究科大講義室にて行われました。 梅園賞は、梅園基金の設立趣旨に沿って、熱気溢れる時期にバイオサイエンス研究に精進し、優れた研究成果(論文発表)をあげた本学の助教あるいはポスドク研究員の1名を顕彰するものです。対象者が研究の推進に中心的な役割を果たしたと認められる発表論文(2011年6月1日~2013年5月31日の期間に査読付き国際学術誌に発表されたもの)の学術的価値とオリジナリティの高さに審査の重点が置かれています。受賞者には表彰状と目録が授与されました。
第10回梅園賞受賞者 齋藤大介博士のコメント
梅園先生は、私も昨年度まで助教として所属しておりました「分子発生生物学講座(研究室)」の助教授であられました。残念ながら梅園先生と触れ合う機会はございませんでしたが、尊敬に値する方であることは在任中折りにつけ認識することとなりました。すばらしい先輩の名の冠された賞を、当該ラボの最後の構成員の一人であった私が受賞できたことはたいへん感慨深く、また嬉しく思います。関係各位の先生方、特に現・京都大学教授の高橋淑子先生に感謝致します。
受賞研究の発表内容(演題と要旨)
「Developmental control of sympathetic nervous system formation: a perspective from neuro-vascular interaction」
我々動物は、平常時には体温や血圧といった内部環境を一定に保つのみならず、緊急時にはそれらを急激に変化させて状況を乗り切る能力をもつ。これらは恒常性の維持と、急性ストレス反応と呼ばれ、動物が生きていく上で必須の能力である。これらの反応を支える重要な機能ユニットの1つは、交感神経系(交感神経と副腎髄質)と、それによって調節される血管系である。交感神経は直接的な神経支配により、副腎はホルモン分泌により血管収縮を促し、結果として血圧や体温の調節を行うと考えられている。しかしながら、交感神経系-血管ユニットの構造・機能の詳細は正確に把握されていないのが現状である。私はまずこの機能ユニットの成立機構の解明を目指してきた。これまでの状況としては、交感神経と副腎髄質は共通の前駆細胞から派生すること、およびその前駆細胞が体内を移動中に交感神経と副腎髄質への分岐が起こり、その後それぞれの細胞が別々の場所まで移動することが、記載レベルで知られている程度であった。私は、この一連のイベントの制御機構、すなわち前駆細胞の移動制御、2方向性の運命分岐、およびその後の細胞種個別の移動制御の機構を細胞・分子レベルで明らかにした。そしてこの交感神経と副腎の一連の形態形成が、血管(背側大動脈)によって主導されていることが分かってきた。つまり、恒常性維持には最下流ではたらく血管が、発生過程では最上位でタクトをふるうのである。
(2013年10月10日掲載)