卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
林 こころ さん
- 富士フイルム株式会社 R&D統括本部 解析技術センター
- 2007年度(博士) 生体高分子構造学
NAISTでの経験が、現在の私の研究者としての基盤を築きました。
私は生体高分子構造学講座(児嶋研)で修士課程・博士後期課程の5年間を過ごした後、約1年半の間、同研究室でポスドクとして勤務しました。その後、2009年11月に企業に中途入社して現在に至っています。現在所属している解析技術センターは富士フイルムグループの基盤技術部門として先端解析技術の開発を行うほか、その解析技術を軸に他部門と協働して商品化・事業化の先導役を担うことをミッションとしています。実際の仕事でも解析技術の開発や導入を行うと同時に、部門を超えていくつかのプロジェクトに参画し、研究を行っています。
私はもともと農学部の出身でしたが卒業研究を行ううちに構造生物学に興味を持つようになり、構造生物学の研究を行ってみたいという希望を持って奈良先端大に入学しました。講座配属するまでの数ヶ月間に行われた講義や演習は、全くの異分野ではないとはいえ分子生物学や細胞生物学に関してほとんど知識のなかった私にとって、その後の研究を行うために必要な基礎を身につけるという点で意義のあるものだったと思います。その後、希望通りの講座に配属することができ、ポスドク期間を含め約7年間にわたって溶液NMRを用いた構造生物学の研究に携わることになりました。
奈良先端大に在籍した期間は思うように結果が出ず苦労したことも沢山ありましたが、NMRを用いた構造研究という軸で、動物・植物・微生物といった枠を超えていくつかのテーマに関わることができました。初めての分野で研究を行う際には全くの素人の状態からバックグラウンドを勉強し直す必要があり、初めは苦労しましたが次第にそのようなことにも慣れていくことができました。このように複数のテーマに関わったことは、浅くではありますが広範な生物学のバックグラウンドを与えてくれたようで現在も自分が関わる研究プロジェクトを理解する上で助けになっていますし、NMRについて勉強した経験はそのまま研究に活きるだけでなく、様々な解析技術を理解する上で役立っています。そして何より、未経験の分野や手法に出会いながら築かれた研究者としての基盤は、大きな財産となっています。
奈良先端大は、研究設備をはじめ研究に集中するために必要な様々な環境を与えてくれる場所です。在籍中は学内だけでなく共同研究等を通して知り合った学外の学生や研究者にも大いに刺激を受けました。私は研究者を志して奈良先端大に入学しましたが、奈良先端大はそのような人にとって特に恵まれた環境だと思います。大学院生としての数年間、このような環境下で研究に没頭してみるのもよいのではないでしょうか。
【2010年07月掲載】