卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
福地 圭介 さん
- 第一三共株式会社 葛西研究本部抗体医薬研究所
- 2000年度(博士) 細胞遺伝学
私は、1995年、何とか入学した奈良先端大バイオサイエンス研究科で、小笠原研に配属され、小笠原直毅先生や研究室の皆さんに、修士・博士課程の5年間お世話になりました。研究テーマとして、枯草菌ゲノムプロジェクトによって見出された機能未知の情報伝達分子の解析に取り組みました。
卒業後は、製薬会社に就職し、癌治療標的分子の評価・阻害剤探索を進めています。現在の研究対象である、ヒトの細胞は24時間以上かけて分裂しますが、大学院時代、枯草菌は20分あまりで細胞分裂するため、72倍のスピード!で実験できたことを懐かしく思います。博士課程在籍時には、国際学会での発表機会などにも恵まれ、世界の研究者との競争を意識しながら研究に取り組んだことが、今も大きな財産になっています。
バクテリアでの研究実績を買われて入社したと思っていた私でしたが、与えられたテーマは抗腫瘍分野ということで、何かの間違いだと思いました。それでも、入社5年目を迎え、周囲のサポートもあり、自分の実験で見つかった新規の抗腫瘍剤標的分子について、阻害剤スクリーニングが進んでいたり、国際特許出願などの機会にも恵まれ、基礎研究から創薬への流れを実感できる毎日を送っています。
枯草菌 ⇒ 癌という知識のギャップは想像以上でしたが、先端大で学んだ分子生物学や、データの解釈などが共通だったお陰で、何とか乗り越えることができました。振り返ると大学院では、実験データに主観的な解釈しかできない欠点に気付いて、客観的な視点を養なうのに5年を費やしたと感じています。
先端大で30歳近くまで学生を続けるのは、金銭的にも精神的にも、能力的にも困難が伴いましたが、生活面で、奨学金や寮施設(夫婦寮まであります)、学費免除など期待以上のサポートに恵まれたこともあり、研究中心の生活を送ることができました。
博士課程を卒業するとポスドクや助手として大学に残ることが常識と考える方も多いですが、私の勤める製薬会社では、年々博士研究員の割合が増えていて、活躍の場も研究に限らず、特許関連、開発部門などに広がっています。また、中途採用も積極的ですし、IT系企業や、証券会社などでも生物系の博士研究員を探しているという話も伝わってきます。
会社にも、多くのヒトの福音となりえる仕事がたくさんあります。大学院で得た、経験、知識を違った世界で生かすことも、将来の選択肢の一つとして考えてもらえると嬉しいです。
※会社就職を考える皆さんへ・・・会社就職には、本人の能力と同等か、あるいはそれ以上に、タイミングが重要です。なによりも、研究が楽しくて、将来のことなんて!って思える状況も、羨ましいのですが、生物系博士課程の新卒で会社に入る場合、2年前(博士後期の2年次)には、資料請求や履歴書を準備することが必要ですので、期を逃さず、チャンスをつかんでください。
【2005年07月掲載】