卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
秋月さおり さん
- 産業技術総合研究所(→協和発酵バイオ株式会社)
- 1997年度(修士) 細胞増殖学、2008年(論文博士)
奈良先端大で得た一番の財産は「科学」に取り組む姿勢です。
神経回路網の基本単位であるニューロンに入力された情報は、シナプスと呼ばれるつなぎ目において、神経伝達物質を次のニューロンへ受け渡すことで伝わっていきます。その中でもグルタミン酸は記憶・学習に密接に関与する主要な興奮性神経伝達物質です。ところが、シナプス間に放出されるグルタミン酸の濃度が高くなりすぎると神経毒性が高まり、種々の神経変性疾患の原因となってしまいます。私は、この神経細胞間のグルタミン酸濃度の調節を行うことにより神経活動を正しく制御する因子についての研究を行っています。
法学部の学生であった私にとって、分子生物学は全く未知の分野でした。しかし、奈良先端大は分野外を含む様々な背景を持つ学生を集めることで研究の活性化を行うという理念をもって大学院生の募集を行っていたため、私のような文系の学生でも入試を受けることが可能でした。実際に入学することができたとき、まだ大学院ができたばかりで建物も機器類も新しく、とてもワクワクしたのを覚えています。また、新たな可能性を求め、出身大学の大学院進学を辞退して奈良先端大を選んでやってきた優秀な同級生も多く、彼らのレベルの高さと研究に対する情熱はとても刺激になりました。
そんな私が奈良先端大で得た一番の財産は「科学」に取り組む姿勢です。未知の現象のメカニズムについて考えているときは、とても楽しいし、たくさん実験したくなりますが、科学に取り組む際には、ただやみくもに実験を行うだけではなく、客観的で確実なデータを得るための方法、考察の仕方、世間に自分の考え方を伝えるための正しいコミュニケーションの取り方などについても学ぶ必要あります。これらを一からしっかり教えることは、先生方にとってもかなり荷が重い作業になるはずなのですが、奈良先端大の先生方は本当に懇切丁寧に指導して下さいました。素人だった私が入学2年後にはなんとか修士号を、さらに就職後に行った研究で論文博士号をいただくことができたこと、また、現在も研究を生業とすることができているのは、奈良先端大で受けた教育のおかげです。
さらに、奈良先端大には、動物、植物、微生物、ゲノム、構造学などの幅広い分野にわたる研究室が存在するので、自分次第でいろんな研究についての実地的な勉強をすることも可能です。学部から博士課程修了まで同じ大学で一つの研究室にいると、このように視野を広く持つことは難しいと思いますので、これもまた奈良先端大の持つ魅力のひとつだと言えると思います。大学院に進学し研究を行いたいと思っている学生の皆さん、自己の見識を深めるためには自身を新しい境遇に置くことも非常に有効な手段の一つです。最高のスタッフと設備の揃った奈良先端大で、是非新たな科学の扉を開いて下さい。
【2010年04月掲載】