卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
寺脇 慎一 さん
- 兵庫県立大学 大学院生命理学研究科 特任助教
- 2005年度(博士) 構造生物学
構造生物学が生命科学に与えるインパクトの大きさに驚き、大きな興味を持ちました。
私は、現在、兵庫県立大学で特任助教として研究を行っています。専門は、タンパク質のX線結晶構造解析法を利用した構造生物学です。最近では、ヒトなどの高等生物の細胞増殖や分化、胚発生過程での体軸形成を制御するWntシグナル伝達経路の中ではたらくタンパク質群を対象に研究を行っています。
私は、2001年に佐賀大学農学部を卒業後、奈良先端科学技術大学院大学に入学しました。当時は、兵庫県の大型放射光施設SPring-8の完成に伴い、日本国内からX線結晶構造解析によるタンパク質の立体構造解析の成果が、海外一流紙に多数掲載され、構造生物学の研究領域が大きく発展している時期でした。また、RNAポリメラーゼやリボソームといった巨大なタンパク質複合体が原子分解能で構造解析された時でもあり、構造生物学が生命科学に与えるインパクトの大きさに驚き、大きな興味を持ちました。そこで、入学後は、X線結晶構造解析法を利用した構造生物学研究を推進していた箱嶋敏雄教授の研究室に所属しました。
奈良先端大の優れた点は、充実した研究設備と研究を支援する体制にあると思います。例えば、X線結晶構造解析を行うためには、タンパク質の調製と結晶化、そして、X線を使った回折実験、さらには、コンピューターを利用した構造解析など複数の技術が必要ですが、奈良先端大に設置された最新鋭の研究機器を利用することによって習得することが可能でした。このような研究環境に加えて、一流の研究スタッフと共に研究活動をおこなえたことは、研究の進め方や考え方を学ぶ上で必要不可欠なものでした。このような支援のもと、私の奈良先端大における研究では、低分子量Gタンパク質Rhoファミリーのシグナル伝達経路ではたらく複数のタンパク質のX線結晶構造解析をおこなうことができました。博士後期課程を修了するまでの間に経験したことは、現在の研究を進める上でとても役に立っています。
また、奈良先端大のもう一つの特徴は、研究室間の交流が盛んである点が挙げられます。他研究室の教員や同期学生との交流は、他分野の研究を知るよい機会であり、自分自身の知識の幅を広げることができました。これは、研究に対するモチベーションを維持する上でも貴重だったと思います。また、学生寮などの施設も充実しているため、生活面の不安もありませんでした。大学院進学を目指す皆さんには、充実した研究生活を可能にする最高の環境だと思います。このように、奈良先端大は、研究者を養成する優れた特徴をもっていますので、研究者を目指すチャレンジ精神旺盛な方には、特におすすめだと思います。
【2010年04月掲載】