卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
宗景 ゆり さん
- CEA Cadarache, France Human Frontier Science Program Fellow
(→関西学院大学 理工学部 准教授) - 2002年度(博士) 形質発現植物学
現在、私は南フランスのCEA Cadaracheという研究所でポスドクをしています。大学院では植物の光環境に対する適応機能をシロイヌナズナ変異株を使って研究していました。オーストラリアでの国際学会ではじめて、今のフランスのボスやラボの研究者に会い、その後ヒューマンフロンティア・サイエンスプログラムのグラントを得て、この研究所に来ることができました。私の所属する研究室は、biophysicsとmolecular biologyの両方に強く、植物の光合成の分野で活躍しているフランスの研究者が集まっています。ここでの研究スタイルは非常にのんびりしていて、午前中のコーヒーブレイクでほとんど全員が集まってきて顔を合わせ、おしゃべりします。話題は日常の出来事から、社会や政治の話、ラボでの事件など様々。広い研究棟の空間で一日に一度顔をあわせることは、ラボの運営にとっても重要なコミュニケーションの場となっています。がなんといっても、フランス人はしゃべるのが大好き。シリアスな話題もたいていジョークに変わって終了します。私も一年半前はちんぷんかんぷんだったフランス語が、今ではだいぶ聞き取れるようになりました。EU憲法の是非を問う国民投票についてや、ヨーロッパでの移民問題、失業率の問題など、議論の内容はややこしくてよくわからないのですが、日本ではあまり聞くことのなかったヨーロッパの事情や考え方を知り、学ぶことの多い毎日です。フランスへ来て必要だと思ったことは、自分の意見を主張することでした。最後にはきちんと譲り合うのですが、それぞれが強い個性を持って自身を主張するので、こちらもきちんと自分を主張しないと、相手に自分の考えが伝わらず簡単に振り回されてしまいます。日常茶飯事に起こる、交通機関や職場のストライキなどのフランスのシステムや文化に翻弄されながら、がんばっています。
【2005年07月掲載】