卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
岡村 勝友 さん
- Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
(→奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授) - 1999年度(修士) 動物細胞工学
私は現在、アメリカ合衆国のMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerにおいてポスドクをしています。恥ずかしながら、大学院進学時までに「将来、研究者になろう」という明確な意志は持っていませんでしたが、研究者である父の影響もあり、少なくとも修士課程には進学して何かしら研究に携わってから、自分の将来を決めたいと考えていました。当時、私は水産学部に在籍し、奈良先端科学技術大学院大学に進学する多くの人と同様に、分子生物学に関する知識はほとんどありませんでした。ちょうど、その頃に読んだ遺伝子工学の入門書のなかで、制限酵素を用いた遺伝子組み換え技術の単純かつ明解な論理に感銘を受け、分子生物学に興味を持ちました。そこで、広く門戸が開かれていて、幅広い分野から人材が集まっている本大学院大学が自分には合っているのではないかと考えて、進学を決めました。入学後は、既に非常に幅広い知識を持った同期生や先輩に出会うこともできましたし、様々なバックグラウンドを持つ他分野からの学生が新しい分野に適応しようと努力している姿も常に間近に見ることもでき、多くの刺激を受けることができました。私の修士課程での研究の成果は、幸運にも投稿雑誌に筆頭著者として掲載されました。もちろんこれは、担当教官であった河野先生を始め、先生方、先輩方のご指導とご協力の賜物です。しかし、私のように専門知識も充分にない状態で入学した者が2年間の修士課程でこのような成果に恵まれたことは、異なるバックグラウンドを持つ人が技術や知識を習得するためのシステムおよび周囲のサポートがしっかりしたものであることを良く示していると思います。現在の私の研究は、修士課程での研究と直接関連している訳ではありませんが、修士課程の期間にサイエンスのとてもエキサイティングな部分を実際に体験できたことが、自分自身を研究者の道に置くきっかけになったと思います。研究者として生きていくことが自分にとって最善の選択肢であったかどうかは、もちろん分かりません。しかし、修士課程修了後も、私はこれまでにさらに幾つかのエキサイティングな仕事に携わることができました。このような体験は、本大学院での経験をなくしては得られなかったことだと思っています。
(写真:後列左から5人目が筆者)
【2009年10月掲載】