NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

平田 昭夫 さん

  • パナソニック株式会社
    (→株式会社JiMED 代表取締役)
  • 1995年度(修士) 細胞構造学
平田 昭夫さんの近況写真

現在の職には2008年4月にキャリア(中途採用)で入社して、光台にある研究所に勤務しています。8年ぶりに学研都市で仕事をするようになりました。私の所属する部署は、社内で最も商品から遠い位置にあるものの一つで、私の仕事は5年後、10年後の商品につながるような基盤技術を生み出すことです。現在はラットを用いて脳活動を電気生理学的に研究しています。さらに、細胞構造学講座の駒井准教授のグループと共同研究も行っています。

私は学部のときは農学部で、栄養学の分野でラットの消化管の運動生理学を卒論テーマに研究をしていました。当時、就職活動をして、ある機器メーカーの化学部門から内定をもらっていましたが、卒論研究をするうちにアカデミックなポジションに就きたいという希望もありました。一般企業に就職をするか大学に残るか迷っていた学部4年の秋に、当時の指導教官から塩坂教授を紹介していただきました。塩坂研究室(細胞構造学講座)は、バイオサイエンス研究科の中でも異色な研究室で、神経解剖学を中心に分子から個体までを対象とした研究を行っています。私は卒論研究から神経系の生理学に非常に興味を持っていたので、この研究室で研究をしたくて奈良先端大に進学しました。入学後にまず半年ほど講義が集中して行われ、細胞生物学や分子生物学の知識がほとんど無かったことを思い知らされました。また、それらの講義だけでは自分の研究テーマを進める上で不十分だったので、所属講座内でジャーナルクラブを中心にした実践的教育(脳・神経系の解剖学、生理学)が行われ、これが現在の仕事にも非常に役立っています。入学した当初から博士の学位を取るつもりでしたので、学位をとれる見込みになるまでは就職活動をしませんでした。博士後期過程に進むとき、定員の都合上、私は他大学の博士課程(4年間)に籍を置きましたが、ポスドクとして就職するまでの6年間を奈良先端大で過ごしました。その6年の間、今のように 奈良先端大の施設が完成していませんでしたので、自分の研究テーマを遂行するために他の研究施設へ行って研究を行ったり、同じ研究科内の他講座の人や情報科学研究科の人たちとカリキュラムとは関係なく自主的な勉強会を開いたり、自由に研究活動に没頭しました。異分野の人たちと簡単に交流できるのは、コンパクトなキャンパスならではだと思います。当時の私の研究内容は、ニューロプシン遺伝子欠損マウスを作製して解剖学的に調べたことでした。そのことで分子から個体まで一通り扱うことを経験できたのは、非常に貴重な経験でした。就職活動は、新たに電気生理学的手法を学べるところという基準で探して、国内のポスドクを2年9ヶ月、その後アメリカでポスドクを4年3ヶ月経験し、そして現在の職に就きました。

学部を卒業する頃には、いえ、2007年までは現在の職業を想像できませんでしたが、常に興味ある事に取り組む姿勢を持ち続けたこと、またそれを支えてくれた人たちがいたことが今の自分につながっていると思います。奈良先端大には、それを実現する施設的あるいは人的環境がそろっていて、そこで養われたものが私の財産です。

【2009年10月掲載】

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