卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
幸田 明生 さん
- 大関株式会社 総合研究所
- 1995年度(修士) 細胞機能学
私は現在、お酒の会社の研究所に勤務しています。‘お酒会社の研究所’と聞くと、新商品の開発やきき酒等を想像されると思います。もちろん、こういった業務は我が社にとって最も重要であり、実際多くの人が携わっています。一方、現在の私の仕事はといいますと実はお酒とは直接関係はありません。ここで少し私の仕事について紹介したいと思います。大学の講義などでご存知のように、日本酒の造りでは微生物が非常に大きな役割を担っています。そこで大活躍している微生物の一つに‘麹菌’がいます。アルコール発酵をするのは酵母ですが、原料の米からアルコール発酵に必要なブドウ糖を作り出すのが麹菌です。麹菌の生産する酵素がその重責を担っているのです。このように麹菌は元来、多種多量の酵素を生産することのできる生物です。私たちのグループでは、麹菌のこの魅力的な性質に着目し応用研究を進めています。具体的には、組み換えタンパク質生産宿主としての遺伝子発現系の開発や、それを利用した有用酵素、有用タンパク質の生産などです。現在の仕事内容(研究テーマ)は大学院時代の研究テーマと直接リンクするものではありませんが、大学院で学んだことが今とても役立っています。それは、担当する研究テーマに関して、どのような背景があり、その分野では現在どのような視点から研究が行われているか、テーマを遂行していくためにはどのような実験が必要か、などを‘自分で考える’ということです。そのためには相当の勉強と調査が必要であるということも学びました。当時、私のようなできの悪い学生に対して、単に実験技術を詰め込むのではなく、忍耐強く研究の基本スタンスをお教え下さった担当の先生方に心から感謝したいと思います。私はバイオサイエンス研究科の1期生にあたりますが、その後、一社会人としてバイオサイエンス研究科の発展を影ながら見守ってきました。スタッフの先生方の継続的な努力により、今では当研究科の躍進ぶりは言うまでもありません。また、産学連携にも力を注いで取り組んでおられるようで、企業人として、OBとして誇りに感じています。当大学院に興味のある学部生のみなさん、古都奈良で、バイオサイエンスの真髄を体験してみませんか?
【2005年10月掲載】