卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
駒井 章治 さん
- 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 准教授
(→東京国際工科専門職大学 工科学部 教授) - 1999年度(博士) 細胞構造学
早いもので、あれから十二支が一回り少し走り抜けてしまいました。2期生だった私が入学前に初めて訪れた頃D棟は無く、3研究室がC棟の同じフロアでひしめいておりました。右も左もわからず"得体のしれない"大学院に飛び込んで、「科学に対する向き合い方やその攻略に関する手ほどきを受けることがほんとうにできるのだろうか」というのが当時の正直な気持ちでした。そうこうしているうちにD棟ができ、ミレニアムホールができ、物質棟ができ...大学全体がただがむしゃらにやってきて、それに自分もうまく巻き込まれたような気がします。研究に対してはとにかく積極的で且つ自由であった当時の風潮(校風?)が今なお受け継がれており、現在に至っているということが、こうして母校の教員として職をいただいた今、本当に快く、誇りに思えることだと感じております。つい先日もNAISTバイオ同窓会と冠してささやかなパーティーを催させていただきました。学長をはじめ諸先生方、先輩や同輩、それから現役の学生さんまで広く集まっていただき、非常に和やかで楽しい時間を過ごすことができました。徐々に変わってきてはいるものの、やはり開学当時の"アグレッシブだけど親密"といった感じが非常に心地よく、これからもこの風潮を引き継いでゆきたいと再確認できたひとときだったように思います。
"拡がるNAIST遺伝子!"ということですので、私自身がどれくらい広がり得たのかを内省的に少し振り返ってみたいと思います。なんとかかんとか"ギリギリセーフ"で博士課程を修得させていただいた後は、奈良先端大で得た知識や技量をさらに発展させるべくポスドクという道を選びました。ラッキーにも日本の生理学、さらには世界の生理学分野で最先端の研究をされている先生のもとでポスドクをさせていただくことができました。日本でのファーストポスドクでは、記憶や学習に関連する脳領域である"海馬"における神経可塑性現象を精力的に解析しておられる真鍋俊也先生の下で海馬のみならず、情動性に関連の深いとされる"扁桃体"での可塑性解析を新たに立ち上げ、一定の結果を出すことができました。またセカンドポスドクでは、パッチクランプ法によりノーベル賞を受賞したSakmann博士の御膝下であるドイツのマックスプランク研究所において当時一世を風靡した2光子レーザー走査顕微鏡の生みの親であるDenk博士の研究室で、遺伝子改変細胞からの電気記録を個体脳から行うといった前衛的な仕事に携わることができました。この5年半のポスドクの経験は今後私の研究生活に強い影響を与えることは間違いありません。知識、技量、人脈そのすべてにおいて素晴らしい広がりを得ることができたのではないかと今は思えます。今後より一層"広がるべき"可能性をこうして得ることができたのも、私を受け入れ育ててくださった奈良先端大の先生方、事務の方々、それから友人たちのおかげであることは間違いなく、本学でみなさんに出会えたことは本当に財産であり、この先もかけがえのない存在であり続けるであろうと確信しております。
現在は本学バイオサイエンス研究科准教授として、また融合領域推進プロジェクトのグループリーダーとして多くの素晴らしい先生方や仲間に囲まれ、楽しく研究生活を一緒に過ごさせてもらっています。これまでの経験を生かし、脳の高次機能を単一細胞レベルで理解し、様々な行動の裏側にある"情報"を解き明かしていくことを目指し、グループとして研究を続けてきております。今後も自分らしい"面白い"研究を精力的に行っていきたいと考えております。進学を考えられている学生の皆さんも、是非"興味深い"研究を奈良先端大で一緒に楽しく進めていきましょう!
【2009年01月掲載】