NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

古道 美穂 さん

  • 京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンター
  • 1997年度(修士) 細胞遺伝学
古道 美穂さんの近況写真

私は1996年から2年間、バイオサイエンス研究科細胞生物学専攻の細胞遺伝学講座に所属し、グラム陽性細菌の代表である枯草菌Bacillus subtilisのゲノム機能解析を行わせていただきました。枯草菌の全ゲノムが決定したのが1997年ですから、ゲノムの配列を元に細胞機能の全体像を明らかにするという、始まったばかりの新しい研究に携われたことになります。

卒業後は大阪大学医学部に勤務し、動脈硬化発症機序の解明と原因遺伝子の探索を試みました。学生時代も仕事に就いてからも、研究を行う上でデータベースは欠かすことのできない存在でした。解読したDNAの配列をデータベースと照らし合わせ、それが既知のものか未知のものかを調べたり、機能を予測したりすることで、迅速な解析が可能になりました。

プロジェクトの終了に伴い、2001年からは京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンターにてKEGGデータベースの開発に携わっています。バイオインフォマティクスは生命科学と情報科学を融合させた新しい学問分野で、医療、食品、環境といった様々な産業を発展させるであろうと期待されています。私は生命科学の出身なので、もう一方の情報科学については仕事をしながら学んでいます。生命のはたらきや有用性を見出すためには、ゲノムにコードされた遺伝子やタンパク質だけではなく、様々な代謝物質が生体内でいかに相互作用して生物機能を発現しているのかを知る必要があります。KEGGはそれを可能にするためのシステムで、国際的に広く活用されています。世界中で利用されるがゆえに問い合わせの量も多く、それらに対応するため英語は必要不可欠です。現在の奈良先端科学技術大学院大学では、私が在籍していた時以上に授業カリキュラムの充実が図られていると聞きます。語学だけでなく専門分野についてもそれらを大いに活用することが、将来的に自分自身の財産になるのではないでしょうか。実際、私も入学から約半年間は毎日集中的な講義を受けました。広範囲に渡る生物学の知識を習得したことが、現在の仕事でも役立っています。

これからの生物学の発展のためには、あらゆる分野の研究者の積極的な協力関係が必要です。そのような観点から、私たちは複数の研究コミュニティと連携したデータベースを構築・運用しています。各研究コミュニティとの交流や情報収集のため、学会や研究会に参加することもしばしばです。また、学生向けのバイオインフォマティクス入門講座で実習を担当することもあります。私自身が実験研究を行っていた経験を生かし、研究者により近い存在のデータベースを提供することで、生命科学の進展に少しでも貢献することができれば幸いに思います。

【2006年01月掲載】

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