卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
川野 光興 さん
- 米国立保健衛生研究所 ( NIH )(→中村学園大学 栄養科学部 准教授)
- 2001年度(博士) 生体情報学
いま振り返ってみますと、奈良先端大で過ごした私の奈良時代はまるで自由の塊ともいえる精神的に贅沢な時代でした。好きな時に好きなだけ、疲れるまで研究できる。(たまにはテニスで汗をかき、実験の待ち時間の間に古墳探検に出かける)こういうふうに大学院時代を過ごそうとしても、実はこれ簡単そうでなかなか難しいのです。なぜなら巷とか世間にはちょっと面白そうなことがいっぱいあるんですね。そういう誘惑にいつも勝ち続ければいいのでしょうが、研究者を志しているような人は好奇心が旺盛なためそうもいきませんよね。でも奈良先端大なら人里離れた場所にあるため世間の雑音が遙か彼方にしか聞こえないのでそういう誘惑も軽減されますし、もし学生寮に入居できればたった徒歩5分で研究室まで実験結果を確認しにいけます。私はこの環境の中でどっぷりと研究に打ち込めました。
卒業研究がきっかけでDNA修復機構に興味をもち、それを実際に自分の手で研究してみたいと思い、奈良先端大の真木研究室を選び入学しました。配属された同期7人が全員男性という、悪ふざけをすると抑止力のない状態で最初の半年間はそれはもう楽しく過ごしました。その後各自にテーマが与えられ本格的に研究が始まったのですが、私は最初から、たった一つの遺伝子クローニングが上手くいかず、胃は毎朝きりきりするし、同僚の進行状況をみては焦り、精神的にかなりまいった状態で実験を行っていました。なんとかみんなの助けでそれをクリアすることはできたものの、またもや次のステップで難題にぶつかり、それがクリアできたのはなんと修士論文を書き始めた月、12月でした。そこから超過密スケジュールでデータをだし、修士論文を書きあげ奇跡的に修士論文発表会に間に合いました。この経験のおかげで、少々の研究上のストレスには耐性ができましたし、頑張ればやれるという自信を得ることができました。
奈良先端大では珍しいことですが、博士後期課程は研究室を移り、森研究室で大腸菌ゲノム上に存在する繰返し配列の機能解析を行いました。この研究の過程で、mRNAと完全にオーバーラップするアンチセンスRNAを発見しました。この研究を国際学会で発表した際に現在のボスと出会い、NIHに留学する機会を与えて頂きました。
米国に来てはや4年が過ぎようとしていますが、奈良時代に得る事のできた、様々な研究上の困難を乗り越えた経験、コミュニケーションスキルが私の大きな財産となり、こちらでもサイエンスに一喜一憂しています。奈良先端大で出会った多くの友人、知人、先生方は私の宝です。ぜひ皆さんも、ここでサイエンスにどっぷり浸かってみてください。
【2006年01月掲載】