NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

増本 奈津美 (ますもと なつみ)さん

  • 株式会社羊土社 編集部
  • 2018年度(修士) 植物共生学研究室

科学につながる本の仕事

増本 奈津美さんの近況写真

私は2年間、植物共生学研究室の吉田聡子先生のもとで他の植物から栄養を奪って生きる寄生植物の研究に取り組みました。研究室紹介で知った他の植物に依存して成長するという独特な生き方をする寄生植物に興味をもったことがきっかけでした。植物を扱うことは初めてだったため、配属後はモデル植物のシロイヌナズナから寄生植物の育て方まで大変丁寧にご指導いただいたことをよく覚えています。

奈良先端大には、他の研究室へ気軽に相談できるよい環境があり、特にその強みを感じたのは、他領域と協力して研究を進めたことです。寄生植物の切片を用いた3D再構築という私の研究のテーマは、約380枚の画像を細胞の種類ごとに塗り分け、画像の位置を調整する必要がありました。しかし手動で行うには限界があります。行き詰まっていたところ、情報科学領域生体医用画像研究室の佐藤嘉伸先生と吉田先生の会話がきっかけとなり、画像の調整や3D再構築方法をご指導いただけるとこととなりました。生体医用画像研究室のご協力がなければ、寄生植物切片の3D再構築はできませんでした。

奈良先端大で学ぶなかでさまざまな研究者に関わり、私は研究のサポートや科学教育に携わりたいと思うようになりました。就活では、科学をわかりやすく世間へ発信する、また研究者や生命科学を学ぶ人たちに役立てるものを作る仕事に就きたいと考えました。しかし方向性を決めたものの、当時の自分にはどういった職ならそれが実現できるかわかりません。だから就職活動ではさまざまな説明会に参加して合致する職種を探しました。就活を続けていくうちに教科書や専門書の編集という職を知ることとなります。最終的に医学書や生命科学系書籍を出版している羊土社へ入社し、編集部で書籍の制作に携われることとなりました。

書籍の制作では、著者の研究者や医師の先生方にご執筆いただいた原稿から誌面を作成、校正作業などを行い、1冊の書籍を作り上げます。著者との原稿についてのやり取りや発行までの綿密なスケジュール管理はもちろん、読者対象が手に取りたくなるタイトルを提案し、表紙デザインをデザイナーなどと協力して検討することも担当編集者の仕事です。また、書籍発行後も、より多くの方に知っていただける販促方法を考え、手にとっていただける機会がないかアンテナを張り続けます。書籍が発行し、書店に並ぶ担当書籍を見ることはとても達成感があり、実際に読んだ方から役に立ったなどのお声をいただくととても嬉しいです。

編集の仕事で、ピペットマンをもって分子生物学の実験をすることはもちろんありませんが、生命科学系の原稿を校正する際に学んだ知識が役立つこともあります。また、読むのは誰なのか?と考え制作を行うことは、奈良先端大学で頻繁に授業や研究室で行った研究発表に通ずるものがあります。

入学当初、私は修士を取ったら研究職に就こうかなという大変ぼんやりとした考えでした。そのため、研究室で過ごした2年間は、自分は研究職ではなくどんな形であれ科学に通じる仕事がしたいのだと気づくことができたとても貴重な時間でした。本校への入学を検討している方や在学生でこのページを読んでいる方はきっと生物や科学に興味がある、または好きだと感じている方が多いかと存じます。バイオサイエンス研究科で、自分の興味や好きなことと長く付き合える道が見つかることを願っております。

 

【2022年11月掲載】

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