卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
小林 克史 さん
- HYPHEN BioMed (SYSMEX Group)
- 2004年度(修士) 構造生物学
科学技術はお互いを理解するための共通言語
「科学に国境はないが、科学者には祖国がある」
これはルイ・パスツールが残した言葉です。
私は今、パスツールを生んだフランスにある会社HYPHEN BioMedで、出血及び血栓症の診断薬を開発しています。
奈良先端大へは2002年に入学し、構造生物学研究室 (箱嶋先生) で蛋白質科学の基礎を2年間学び2004年に修士課程を修了しました。
そこで学んだことは、研究の一貫性と、ストーリーの重要性 ”Make a story” であり、それは今でも大切にしています。
構造生物学に興味を持った動機は、構造決定することによって、そのタンパクが自然界でどのように働いているのかを視覚化して説明できることです。
それまで論文や教科書で見ていた単純化された模式図を、実際のものとして視覚的に示すことができるのです。また、一度決定した構造はよほどの事がない限り覆ることはありません。
但し、研究の目的は構造を決定することではなく、決定した構造に基づいて生物学上の問題を解明することです。それは当然、より多くの人が疑問に感じていることや、解明される事実がより大きな影響を与えることであった方が多くの人の目に留まります。
どのタンパクをターゲットとして構造解析を行うのか、そのタンパクがどのような機能を持ち、どのように相互作用しているのかを含めて、ストーリーを作り上げていくことがとても大切であるということです。
これは現在の私の仕事である、ものづくり、商品開発でも同様であり、開発を始める前にどれだけ具体的にかつ詳細にストーリーを作り上げるかによって、そのプロジェクトの内容が変わります。
商品開発におけるストーリーは、商品企画であり、製品仕様なのですが、市場(顧客)から何が求められているのかを、より早い段階で具体的に理解し取り入れることで効率よくプロジェクトを進めることができます。
またそれはリーダーだけでなく、個々のプロジェクトメンバーが考えて理解しておくことで一貫性を維持できます。
一方で個々人がそれぞれのストーリーを持っていればディスカッションの内容は広がり、他人のアイデアに刺激を受けることで個々人及びプロジェクトの考えも更に深まります。
日本で学び、日本人としての誇りを持って現在の仕事に取り組んでいますが、科学の根底はどこでも共通で、奈良先端大で身に着けたScientist/Engineerとしての基本は大きく活かされています。
仕事で世界各地の研究者や、医療従事者とコラボレーションする機会がありますが、文化や背景は異なっても、事実は一つ。科学技術はお互いを理解するための共通言語です。
ところで、2013年に奈良先端大のキャッチコピーが決定されたようです。
「無限の可能性、ここが最先端 -Outgrow your limits-」
研究や科学技術の最先端で活躍したいなら、当然奈良先端大ですよね☆
<卒業後の略歴>
2004年から2010年までSYSMEX(神戸)で凝固検査の診断薬や、検査機器の解析アルゴリズム、アプリケーション開発を行ってきました。
元来色々なことに興味があるのですが、縁あってこの分野で仕事を続けており、外からの刺激を受けつつもここでの専門性に磨きをかけています。
様々なことに挑戦しているうちに、2011年からフランスで働くことになり、現在もフランスの診断薬メーカーHYPHEN BioMed (SYSMEX Group)で研究開発のマネージャーとして商品開発を行っています。
全人類の医療へ貢献する、世界に誇れる製品を作ることを目的に、日々邁進しています。
【2015年04月掲載】