卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
鳥山 真奈美 さん
- Dell Pediatric Research Institute
(→奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 助教) - 2011年度(博士) 分子情報薬理学
世界に誇れる技術と論理的思考能力を習得できたことは誇りです。
私は2008年に奈良先端大に入学し、伊東広教授(分子情報薬理学研究室)のもと、Gタンパク質シグナルによる大脳皮質の形成制御機構について研究を行いました。2012年3月に博士の学位を取得し、2ヵ月後に長女を出産しました。同年12月に渡米し、現在は、アメリカ合衆国テキサス州にある、テキサス大学オースティン校にて博士研究員をしています。
現在は葉酸(ビタミンB9)が胎児の発生になぜ必要なのかを研究しています。葉酸は、ほうれん草などの葉物野菜にたくさん含まれている栄養素です。妊婦さん向け雑誌等には必ず「妊娠初期には葉酸を摂取しましょう」「葉酸は神経管閉塞障害のリスクを低減させます」と記載されており、厚生労働省も妊婦の葉酸摂取を推奨しているにも関わらず、その分子メカニズムは解明されていません。妊娠当時、博士課程3年の学生だった私はその分子メカニズムに興味と疑問を持ったのですが、まさかこの疑問がそっくりそのまま現在の研究テーマになるとは、このときは思いもしませんでした。働き盛りである私たちの世代の女性の中には、結婚、出産に将来の不安やためらいを感じる方もいらっしゃるでしょうが、私の場合、出産、育児を経験したからこそ現在の所属研究室の研究内容に興味をもち、研究に携わることができたのですから、研究者としての視野を拡げてくれた娘に感謝しています。
奈良先端大時代には、生化学、細胞生物学的、分子生物学的手法を幅広く習得しました。現研究室はマウス遺伝学を用いた解析方法をメインとしていたので、私が持つ技術は非常に重宝がられています。すでにいくつかの実験系も立ち上げました。学生時代、常に実験データの高いクオリティや筋道の通った研究ストーリーを求められ、これら実行できるよう努力したことが現在の私の評価につながっているのだと思います。世界に誇れる技術と論理的思考能力を習得できたこと、また、いつでもどこでも誰とでも議論が繰り広げられる最高の環境で博士の学位を取得できたことは、私にとって大きな誇りです。
奈良先端大時代に比べ、現在は研究に費やせる時間が格段に減ってしまいましたが、密度の濃い、内容の充実した研究生活を送ることができるのは、サイエンスだけでなく「規則正しく、メリハリのある研究生活を送る」という生活面まで幅広く指導してくださった伊東教授のおかげです。皆さんが奈良先端大で世界トップクラスのサイエンスを学び、輝かしい未来の礎を築かれることを願っています。
【2014年02月掲載】