卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
杉本 涼子 さん
- 株式会社 童夢
- 2001年度(修士) 植物分子遺伝学
密度の濃い2年間
なぜ奈良先端大に入ったのかというと、「なんとなくおもしろそう」と直感で感じたからです。学部生だった当時、大学院へ進学希望だったのですが、新しい世界で新しい研究をしたいと漠然と考えていました。でも、これといってやりたいことが今は定まっていない・・・と悩んでいたところ、偶然奈良先端大のパンフレットを見ました。動物から植物までさまざまな分野の研究を扱う大学院大学で、入学後に研究室を選ぶことができると書いてあったので、「これだ!」と思い、受験したのでした。
入学直後は、さまざまな研究室を見てまわる機会が与えられていました。実際に研究室を訪問したり、先輩方の話を聞いたりすることで、「自分が科学の何に興味があるのか?」ということに改めて気づくこともありました。私は、学部生時代に植物の自家不和合性のしくみを研究していました。植物は動物とちがい、植物独特のふしぎなしくみをたくさん持っています。動物を対象とした研究も考えましたが、やはり自分は植物の生きるしくみを探求したいと思い、入ったのが「植物分子遺伝学研究室」です。
そこでは、植物の光受容体のシグナル伝達機構についての研究を行いました。光受容体がどのようなタンパク質と作用して働くのかを同定する仕事です。大きな研究方針は先生が立てて、機器の使い方、細かい実験方法はすべて先輩方に教えていただきました。同期の学生も7人と多く、実験の相談などもよく行いました(ほとんどの学生が寮に入っているため、日常生活で寂しい思いをしたことはありませんでした)。研究課題についてじっくり取り組めた2年間は、自分にとってとても貴重で密度の濃い時間だったと思います。
奈良先端大卒業後は、3年間分析会社に就職していましたが、科学のおもしろさを伝える仕事をしたいと、JT生命誌研究館へ転職。展示や季刊誌、映像など、さまざまな媒体を通じて、科学のおもしろさを表現し、人に伝える仕事に5年間就いていました。今は、東京で児童書の編集・制作をしている会社に勤めています。ここでも、科学分野の本を主に担当しています。大学院を卒業するときには、思いもつかなかった仕事に就いていますが、奈良先端大で培われた「科学を探求する心」は今も変わらずで、細い糸でつながっているのだと思っています。
【2013年07月掲載】