卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
増田 美和 さん
- 理化学研究所 脳科学総合研究センター
- 2007年度(修士) 遺伝子発現制御学
自分のやる気と行動力さえあれば、ほとんどの事は出来る環境
「大変なところに来てしまった・・・」これが研究室に入って2週間目の正直な感想でした。ほんの10分前まで和気あいあいと世間話をしていた先生方が、今目の前では鬼の形相です。恩師である別所康全教授、松井貴輝先生は今でこそ気さくに接してくださいますが、当時はとにかく怖かったです。研究を進めるにあたって原理、目的、客観的見解、報告されている知見、新規性などは科学者としては当たり前の知識や考え方なわけですが、これらを毎朝のdiscussionでは正確にかつ端的に答えることを要求されました。一番ダメなのは曖昧にすること。中途半端に答えた時は朝から雷が落ちました。大人になってからあんな真剣に叱ってもらったことはありませんでした。私は修士課程で卒業し、現在も研究職に就いていますが、研究者としての基礎は奈良先端大での2年間で教育して頂いたと実感しています。
先端大の2年間は研究三昧の日々でした。ゼブラフィッシュの稚魚を用いて発生過程の分子の変化をリアルタイムで可視化するという、私にとっては大変魅力的なテーマを頂いて、バイオサイエンス研究科の枠を超えて沢山の先生方や研究者の方と交流させて頂く機会がありました。例えば当時使用していたイメージングシステムでは検出限界がネックとなっており、何とかできないかと悩んでいたところ、顕微鏡自体を作ってはどうかと他研究科の先生からご提案頂き、一緒に顕微鏡を作ったこともありました。残念ながら結果はうまくいきませんでしたが、その時の経験は現在の仕事に確実に生かされていると思います。実験の相談をしに植物の研究室に通ったこともありました。当時は研究科や研究室の枠を超えて自由にやらせて頂きました。自分のやる気と行動力さえあれば、ほとんどの事は出来る環境にある。その点も奈良先端大の魅力だと思います。
現在は理化学研究所でゼブラフィッシュ嗅覚忌避行動の神経回路について研究しています。研究を進める中で、あれもこれもやってみたいことが沢山あります。そこで時間的なことや能力的なことを鑑み、何を優先させるか正しく選択する能力が問われます。迷った時に思い出すのは別所康全教授がいつも学生に話されていた「本質的なことを考えなさい」という言葉です。恐らくどんな仕事に就いたとしても物事の本質を見抜く能力は必要なのではないでしょうか。先に説明した朝のミーティングは正直辛かったのですが、今になると本当に良い経験、教育をして頂き感謝しております。
研究の一方で、ラウンジで飲み会をしたり、映画に行ったり、ラーメンを食べにいったり、学生同士でよく遊びました。奈良先端大で知り合った仲間とは今でも交流があり、大切な友人です。色んなことを遠慮なく話せるのは、大げさかもしれませんが苦楽を共にした戦友のような感情を持っているからかもしれません。私も含め多くの学生が寮で生活しており、その環境がより友人関係を親密にしたように思います。「友人は宝」と言いますが、彼らと出会えたことは私の宝でもあります。
奈良先端大は自由な校風であることに加えて、第一線でご活躍されている先生方が沢山おられることや、存分に実験ができる環境が整えられています。奈良先端大のこのような環境をどう過ごすか、どう生かすかは本人次第だと思います。これから入学される学生の方達も充実した学生時代を奈良先端大で過ごして頂きたいと願っております。
【2013年06月掲載】