卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
和氣 貴光 さん
- 栃木県農業試験場
- 2007年度(修士) 植物遺伝子機能学
NAISTで培った知識や実験技術をフル活用してゆきたい
私は、学部生の時は植物病理学研究室に所属していました。同じ大学の大学院に進むつもりだったところ、担当教官が奈良県出身の方で、「奈良にNAISTっちゅう大学院大学があるで」と教えていただきました。大学院大学??学生が大学院生しかいない大学とはどんなところだろうか?と興味を持ち、入学説明会に参加したのがきっかけでした。
奈良先端大は入学前には所属研究室を決定せず「入学してから研究室を選ぶ」というシステムをとっています。私は、学部に引き続き植物病理学を専攻するつもりでしたが、入学後の講座説明会では動物、植物、微生物を問わず全ての講座が魅力的で、なかなか決めることができませんでした。
悩んだ末、植物遺伝子機能学講座(現:植物発生シグナル研究室)で中島准教授の指導のもと、根の形態形成について研究しました。植物の細胞は細胞壁によって固定されているため、厳密な分裂、分化の仕組みが不可欠です。根は透明に近いので観察しやすく、この仕組みを明らかにするのに最適な材料といえます。研究室には高性能な共焦点レーザー顕微鏡や微分干渉顕微鏡が配備されており、世界最先端の研究を行うことができました。
また、在学中は、研究室全員による進捗状況報告が頻繁に行われ、そこで「場数を踏む」ことによって、パワーポイントのスライド作成力や表現力が鍛えられたと思います。
学部時代に慣れ親しんだ研究室を離れたことによって、若干の面倒さも感じました。それは、せっかく覚えた機器の操作方法、実験器具の配置場所、ラボルールなどをほとんど一から覚え直さなければならなかったことです。しかし、異なる環境への適応力が鍛えられ、社会人になった今でも役に立っています。
卒業後は、出身地である栃木県庁に技術職(農業)として採用され、農業試験場に配属されました。現在は、生物工学研究室という部署で、イチゴやお米など農作物の新品種を作出するため、有用形質に連鎖するDNAマーカーの開発や、食品の偽装問題に対処するための品種識別技術などの研究を行っています。研究職として植物分野で仕事ができるのは非常に恵まれたことであり、奈良先端大の充実した環境で好きなだけ研究して獲得した力が、採用時に評価されたのだと思っています。県の農産物出荷額&量の増進のため、ひいては日本の食物自給率向上のため、これからも奈良先端大で培ったバイオサイエンスに関する知識や実験技術をフル活用してゆきたいと思います。
追記:
植物細胞を「初期化」する遺伝子を発見~さまざまな細胞に分化する能力を持たせる:有用植物の効率的な繁殖にも期待~
和氣貴光さんが中心的に研究に携わった論文が平成23年7月28日にカレントバイオロジーの電子版に掲載され、プレスリリースが行われました。
【2013年04月掲載】