卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
高橋 靖幸 さん
- ダウ・ケミカル日本株式会社 ダウ・アグロサイエンス事業部門
- 2008年度(博士) 植物分子遺伝学
自分の価値を高めるチャンスをくれた場所
私は、2004年に奈良先端大に入学し島本功教授の植物分子遺伝学講座でイネの花成誘導の研究を行いました。2009年に博士の学位を取得した後に同研究室でのポスドクを経て、ドイツのMax Planck Institute for Plant Breeding ResearchのGeorge Couplandのグループにて約2年間ポスドクとして花成誘導機構の研究に携わっておりました。現在は、ダウ・ケミカル日本株式会社ダウ・アグロサイエンス事業部の研究開発本部にて主に遺伝子組み換え作物に関する認可取得業務に携わっております。
博士後期課程におられる皆さんの多くは、学位取得後の進路として大学教員や研究所の研究員などを考えているかと思います。私も例外でなく、そのような職に就きたいと思っていました。しかしその一方で、私は基礎研究分野のみにとどまらずより産業に近い分野にも興味があったため、これまでの経験を生かせる職場として民間企業を含めて幅広く模索していました。そしてドイツにいる時に、島本研時代の先輩から現在の会社の求人情報を教えてもらったことがきっかけで入社することになりました。
今回、学生の皆さんの就職支援という場で私の経験を書かせて頂くという事ですので、私が奈良先端大で研究生活を行ってきた中で、現在の業務に生かされていることを紹介させていただきます。
1つ目はもちろん研究における経験と実績です。私はフロンティアコース1期生であった事もあり、チャレンジングな課題を島本教授と共に立ち上げ、インパクトの高い論文として発表出来た事は非常に良い経験と実績になりました。
そして2つ目は、国際的な感覚と経験です。当時の島本研には外国人のメンバーが多く、研究に関する議論はもちろん日常的な会話を英語で行う機会が多くありました。また奈良先端大の教育プログラムによる、国際学会での発表や海外研究室への訪問、そしてUC Davisや中国科学院の学生らと交流をする機会を経て、有用な実践英語の経験や国際的感覚が養われました。
このように、奈良先端大の良いところは、自分の価値を高めさせてくれる環境と機会を多く設けている事だったと思います。実際に、博士課程での生活は日々の実験ばかりに追われがちになってしまうかと思います。しかし、私の奈良先端大での経験からお伝えしたい事は、その環境を最大限に生かせるかは皆さん次第という事です。博士の学位取得後の進路は限られているようで実は多くの選択肢があります。是非皆さんには、在学中にしっかりとサイエンスに向き合うと同時に、奈良先端大の教育プログラムにもしっかりと取り組む事で自分の価値を高め、将来的に柔軟な選択ができるように準備をしていただければと思います。そして今後、奈良先端大の卒業生がより多くの分野で活躍するのを楽しみにしております。
(以下は、高橋靖幸さんが島本教授とともに取り組んでおられた研究についての記事です。)
バイオサイエンス研究科 島本功教授と博士後期課程3年の高橋靖幸さんが、イネ品種の収穫時期を調節するメカニズムを解明(2009年2月24日 大学ホームページ NEWS& TOPICS )
世界初!イネ品種の収穫時期を調節するメカニズムを解明~花咲かホルモンの量が関係 品質向上、増産に期待~イネの進化の解明に手がかり (2009年2月23日 プレスリリース)
【2012年11月掲載】