NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

近野 洋 さん

  • カゴメ株式会社 総合研究所
  • 1998年度(修士) 植物細胞工学
近野 洋さんの近況写真

私が植物の研究に興味を持ったきっかけは、講義などで植物の環境応答の柔軟性について科学的な視点で捉えるおもしろさを知ったことにあり、関連した研究ができる場所を探していました。奈良先端大は植物系の研究室が非常に多く、研究テーマはいずれも興味深いものでした。他分野の学生まで受け入れる幅の広い間口、そして基礎からの教育に注力するという体制の奈良先端大へ入学したのは私にとってごく自然なことでした。事実、分子生物学の実験手法に関してはほとんど経験がありませんでしたが、入学後の講義・実習カリキュラム、そして研究室配属後の実習で丁寧に教えていただき、個人の研究において特に苦労は感じませんでした。佐野研究室では光や糖、植物ホルモンの情報伝達についてシロイヌナズナを材料に研究、興味ある分野だったため積極的に取り組むことができました。ラボのメンバーでの旅行など研究以外の時間も思い出深いのですが、おもしろい論文、実験結果や次の実験の計画について先生や先輩と議論する時間が私は一番好きでした。

実は博士課程まで進む気満々で入学、研究も楽しかったのでM1の頃もそのつもりで研究に取り組み、ワークショップや学会にも参加させてもらっていました。ところが興味半分でやってみた就職活動でカゴメという会社を知り、そこで働く人や他大学の学生(文系含む)から多くの刺激を受けました。採用活動を進めていく過程で彼らとの共感が積み重なり、私はカゴメに入社することを決意しました。カゴメは私がこれまでに体験してきた自然科学のおもしろさ、そして自然と触れ合う喜びを一般の人たちに伝えることができる組織だと感じたからです。「進学か就職か」ではなく「進学かカゴメか」という選択でした。

今年はトマトの栽培指導のために小学校を訪問するという仕事が舞い込んできました。念願であった子どもとの栽培体験がカゴメの仕事を通じて実現したのです。やりたい仕事にどんどん近づいていることを実感しています。入社以来、トマトの研究を基礎研究から技術開発まで幅広く担当していますが、課題形成や試験計画、そして日々の作業レベルにいたるまで、学生時代に習得した知識・技術は大いに役立っています。また今でも続いている強力な人脈は私にとって大きな財産であり、幅広い分野のスタッフが揃っている奈良先端大ならではと言えるでしょう。佐野先生をはじめご指導いただいた先生方、先輩方には大変感謝しています。その感謝の気持ちが少しでも伝わればと、今回のレポート作成を引き受けさせていただきました。自然科学に興味を持ち、自ら積極的に学ぶ学生が増えていくことを願って止みません。

【2005年10月掲載】

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